理系夫婦のうたたねブログ

理系夫婦が好きなことを書いていきます。旦那は医師では有りますが、医学的助言は一切おこなっていません。

ラットは寝ないとどうなるのか

旦那です。

 

古典を読みました。

academic.oup.com

 もともとは1989年にpublishされた論文を検証してまとめ直したreviewです。有名な総説ですね。しっかり読むのは久しぶりな気がします。私はラットやマウスの研究をしたことがないのでイマイチなまとめになってしまうと思いますが、あしからず・・・

 

 

 

1989年の結果の確認

 筆者たちが1989年に報告した断眠実験の結果を再確認している。1989年と同じくDisk-over-water法*1でラットのTotal sleep deprivation(=TSD すべてのsleep stageで断眠)とParadoxical sleep deprivation (=PSD)を行っている。*2

1. 死亡率

TSDされたラットは2-3週程度で死亡、PSDの場合には4-6週で死亡することが確かめられた。

2. 体重減少

TSD、PSDともに食事摂取量が増加するにもかかわらず、体重が減少することが確かめられた。エネルギー消費量は増加していることを確かめた。

 3. 外見

断眠されたラットは痩せこけて衰弱することを確かめた。

4. 皮膚所見

ひどい皮膚潰瘍と過角化が手足と尾にできることが再現された。

5. 体温

TSDラットでは最初、深部体温は上昇するが、その後体温が低下していった。一方でPSDラットでは一貫して体温は低下した。

6. 反跳睡眠

TSDをやめた場合には反跳睡眠(rebound sleep)を認めた。反跳睡眠にはREMが多いという特徴があった。

 

断眠実験の交絡因子について

 断眠実験にはいつも交絡因子がつきまとう。ラットでの研究ということで*3絡因子としてサーカディアンリズムの破綻とストレスの影響があげられた。

サーカディアンリズム

 常に明期で実験を行うことによってコントロール群でも同じようにサーカディアンリズムを破綻させて実験を行った。筆者たちはサーカディアンリズムの破綻のみでは断眠による表現型は殆ど出ないとしている。(論文は引用されていない。)加えて12時間ごとに明期暗期を分けての実験も行ったが、こちらでは明期のみのときと同じ表現型がみとめられた。これらのことから断眠による影響はサーカディアンリズムの喪失のみでは説明できないとしている。

 

ストレス

 コントロール群も同じくDisk-over-water法を行われていたため、断眠群と比較することでストレスのみの影響を除外できていると考えられる。加えて断眠群では典型的なストレス応答*4が認められなかった。TSDラットの体温変化はストレス応答と真逆であり、最初は体温の上昇を認めるが、その後は経時的に体温は低下していった。時間経過とともにエネルギー消費が増大することもストレス応答では認められない特徴であった。反跳睡眠にREMが多いこともストレス応答では認められない特徴であった。これらのことからストレスの影響は完全には除外できないが、断眠特異的な反応を捉えられているとしている。

 

断眠によって認められた変化と考察

エネルギー消費の増加

 断眠でラットのエネルギー消費は倍増した。このエネルギー消費の増加に関しては単に覚醒時間が延長したことによる効果ではないとされる。実際にSDを継続するに従って徐々にエネルギー消費量は増加していくことが確かめられた。

 エネルギー消費量の増加を説明できるホルモンとしては副腎皮質ステロイド甲状腺ホルモン、アドレナリンを測定したが、明らかな増加は示さなかった。唯一循環血中のノルアドレナリンはSD開始とともに分泌が増加し、その後も徐々に濃度が上昇した。この結果からはエネルギー消費の増加はノルアドレナリン分泌の増加によるものと考えられた。

 断眠中のエネルギー消費に対するノルアドレナリンの効果を見るため、TSDラットにグアチネジン*5を投与した。結果として血中のノルアドレナリン濃度は下がったものの、エネルギー消費量やSDに関連した他の影響は変化しなかった。このことからノルアドレナリン血中濃度上昇はエネルギー消費増大の原因ではなくて、結果であることが示唆された。

 次に甲状腺機能を低下させたラット*6を作成した。このラットでは断眠初期の体温上昇が認められず、その後の体温も一貫して低温であった。一方で中枢における体温のセットポイント上昇は起こっていた。体温低下はより顕著であるものの生存期間は変化しなかった。逆に甲状腺機能亢進状態にした場合には体温は最初から上昇し、その後も高いままで維持できていた。しかし、生存期間は37%短縮した。

 以上の結果からは上昇した体温のセットポイントまで体温を上昇させるために、甲状腺ホルモンやノルアドレナリンなどを用いているのではないかと考えられた。

 ではエネルギー消費の増大が、最終的な死に関わっているのか。それを明らかにするため10℃未満という寒冷条件でラットの観察を行った。この場合にはエネルギー消費量は常温下での甲状腺機能亢進ラットと同程度となるが、34日間の観察期間で死亡したラットはいなかった。

 別の可能性として甲状腺機能亢進により寿命が短くなるのは異化亢進による組織の破壊などが関与するのではないかと考えられた。しかし、断食ではTSDと比較して2倍以上の体重減少が起こるが、死亡例はなかった。

 甲状腺機能低下では体温がより低下するも、死亡までの期間は変化せず、甲状腺機能亢進では体温は保たれているが、死亡までの期間は短くなる。これらの結果からは低体温が直接の死因とは考えられなかった。

 ただし、興味深い点として甲状腺機能低下ラットでは断眠による衰弱した様子や皮膚障害が認められず、外見上は断眠されていないラットのように見えた。皮膚障害に関しては病理学的にもあまり類を見ない障害であるとされ、詳細なメカニズムは不明であるが、断眠甲状腺機能亢進の両方が関与することで形成されているのではないかと考えられる。

 

体温制御

 断眠されたラットの体温は特徴的な変化をした。TSDラットの深部体温は断眠開始直後には上昇するが、その後は低下の一途を辿った。ラットのエネルギー消費量は増大していたことから、この体温の低下は熱の喪失によるものと考えられる。TSD開始直後の体温上昇の原因としては体温制御中枢でのセットポイント上昇が関係していると考えられた。実際に深部体温が低下しているにもかかわらず、視床下部の温度は長い間保たれていた。加えてTSDラットは高温環境を好んでいた。

 一方でPSDラットでは最初の体温上昇も視床下部の温度上昇もなかった。このことからは体温のセットポイントの上昇はNREM sleepの障害によって生じていると考えられた。逆に熱の喪失はREM sleepの障害によって生じていると考えられた。実際にNREM sleepの断眠では死の直前まで体温の上昇が認められていた。

 総じて睡眠によって体温の調節は大きく乱れると考えられた。

 体温のセットポイントは視索前野(Preoptic area)で制御されているとされる。この領域を傷害した場合には体温の恒常性制御ができなくなった。しかし、それだけではTSDで認められるような体温変化は再現できなかった。このことからはTSDによる影響は単なる体温調節中枢の障害ではないと考えられた。

 次に異常な熱の喪失の原因を探るために、末梢血管の拡張、収縮能の評価を行った。血管拡張薬を用いた実験ではTSDラットにおいても末梢の血管収縮能は保たれていることが示唆された。一方で断眠によって血管収縮能が傷害されるという研究結果も存在することから、はっきりと結論は出ていない。おそらく、血管収縮能の障害は体温調節能不全の一部をなすと考えられるが、全てを説明できるわけではないようである。

 食事摂取量が増大しているにもかかわらず、体温を保てないというのは非常に興味深い。加えてTSDラットは体重も減少し、運動量も現症していることから摂取した食物の熱量の行き先は現時点では不明である。

 

脳での変化

 睡眠の恒常性は脳で制御されていると考えられているが、断眠で死亡したラットの脳に明らかな変化は認められなかった。モノアミンレベルやREM sleepに関連するアセチルコリンレセプタの解析、脳領域から細胞内小器官のレベルまでの病理学的検討まで行った論文があるものの、大きな変化はみとめられなかった。初期応答遺伝子の検討でも多くの脳領域では差が認められず、糖代謝を見た研究でも視床下部視床などで低下を認めるのみであった。しかも視床下部での糖代謝の低下はTSDラットよりもNREM sleepをしているラットのほうが低下していた。

 結果として断眠されたラットの脳には、断眠の効果を説明できる形態学、機能的な変化は認められなった。

 

免疫への影響 

 1989年の研究時点ではTSDラットも、PSDラットも免疫の異常を示さなかった。ただし当時の実験で計測された項目は脾臓の細胞数カウントなど免疫能を充分に反映しているか不明な項目であった。1993年の報告ではTSDラットは6匹中5匹で菌血症となっていた。一方でコントロール群のラットは菌血症を起こしていなかった。ここからはTSDによって免疫が正常に働かなくなっていることが示唆された。菌血症の原因となる感染のfocusははっきりとせず、Bacterial Translocation*7が考えられた。

 以前の実験で免疫異常が検出できなかった理由として、単純な免疫能の低下のみが起こっているわけではないということが挙げられた。具体的にはTSDラットの半数でリンパ球は減少したが、半数では増加した。加えてTSDラットとコントロールラットに同種異系の腫瘍細胞を移植した結果、TSDラットでは腫瘍があまり成長せず、より早く退縮した。この結果からはT細胞系の免疫が賦活化されている可能性も示唆された。これらの結果からはTSDによって免疫系が撹乱されている可能性が考えられる。

 菌血症がその他のTSDで見られる反応に影響しているかを見るため、広域スペクトラムの抗菌薬投与を行いつつTSDを継続する実験も行ったが、他のTSDでの影響に変化はなかった。注目すべき点として、抗菌薬投与を行っていても、ラットはほぼ普通のTSDラットと同じ時期にやはり体温が低下して死亡した。

 これらの事実からはTSDは免疫系を撹乱し、最終的に菌血症を起こすものの、その他のTSDによる影響全てを説明することはできないと考えられた。

 

まとめ

 断眠群とコントロール群の比較により、少なくともラットにおいてはNREM睡眠やREM睡眠は生物学的に必要不可欠であると考えられた。断眠は特徴的な一連の変化を引き起こすことも明らかになった。

 一方で断眠による影響から睡眠の生物学的意義を明らかにすることはできなかった。睡眠の意義に少しでも迫っていたのは体温制御に関する知見であると考えられた。今後睡眠と体温制御に関してのさらなる研究が必要であると考えられる。

 断眠によって生じる、死を始めとした様々な状態を一元的に説明することは現時点ではできない。おそらく、多数の経路が関わる過程であると考えられ、それゆえに一つの機序を回避したとしても、同じ結果が得られるものと考えられる。

 睡眠は多くの生物種*8で認められる。一つ一つの動物種での睡眠の意義が全て異なっているということは考えにくい。つまり睡眠が保存されている理由があるはずである。

 

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 感想

 ラットの実験ということでなかなか想像しにくく、加えて過去の論文の知識もないので読むのが大変でした。今後他の論文読んで間違いに気づいたら直しに来るかもしれません。

 体温の変化に重きが置かれているのが印象的ですね。哺乳類の体温制御ってそれだけで本が1冊かけそうなくらい深いテーマだと思うのですが、それについて語り始められたら理解を超えてしまいますね。

 医学での勉強では生理学をしっかりやることはなく、ふわっとした理解で十分であり、病態をある程度説明できればそれでよい。っていうことがほとんどでしたので、本気で生理学を勉強しなくては哺乳類の理解っていうのは難しいんだろうなーと思います。

 一方でこのreviewを読んでいて、医学のバックグラウンドというのは哺乳類の研究には役立つのかもしれないとおもいました。一つ一つの生理学的知識はアバウトですが、一通り全身を理解しているおかげで睡眠のような多臓器が影響を受けるような現象の理解は比較的しやすいように思います。

*1:円盤の上にラットを載せて、EEGを継続的に記録し、入眠したら円盤を回転させて起こす。円盤が回転している間は反対に歩かないと水に落ちてしまうような仕組みになっている。

*2:REM sleepのことをparadoxical sleepということがあります。むかしの論文に多い印象

*3:C. elegansにはサーカディアンリズムは存在しない。

*4:胃潰瘍や副腎過形成、食欲の低下、脾臓の萎縮 、毛細血管血流の減少、最初に低体温が認められて、その後に発熱するという体温の変化

*5:ノルアドレナリンの遊離阻害薬、ノルアドレナリンの枯渇を引き起こす。

*6:プロピルチオウラシルを用いた

*7:腸管のバリア機構の破綻から腸管内の細菌が血流に乗る現象 ICUに入っている患者さんなどでも見られる

*8:おおよそ神経系を持つ生物はすべて、最近ではクラゲで提唱されて話題になりました。

線虫は寝ないとどうなるのか

旦那です。

 

 少し不眠や断眠についての論文をまとめてみようと思っています。ハエやマウス、ラットやヒトはreview頼りになりそうですし、そもそもどこまで続くかは気分次第ですが。

 これからは論文紹介の際には文章をまとめて基本的に論文の構成に忠実にまとめてみようと思います。感想は後で書くことにします。

 

線虫と断眠の論文はいくつかありますが、今回はこちらを 

DAF-16/FOXO regulates homeostasis of essential sleep-like behavior during larval transitions in C. elegans

Driver RJ, Lamb AL, Wyner AJ, Raizen DM. Curr Biol. 2013 Mar 18;23(6):501-6.

 

 

Summary

 睡眠には恒常性があり、睡眠の量と深さを保つ機構があるとされている。断眠(sleep deprivation)をされた際、その後に反跳睡眠(rebound sleep)が認められることからも睡眠に恒常性維持の機構があることを示している。この様に睡眠に恒常性があることは睡眠が不可欠であることの間接的な証拠となっている。

 今回筆者らはC. elegansの転写因子DAF-16が断眠に反応して働いていることを示した。DAF-16は断眠によって核内移行し、断眠DAF-16の活性化を介してdauerへの移行を促した。daf-16のloss-of-function変異体は断眠に対する抵抗性が下がり、断眠での死亡率が上昇した。興味深い点としてdaf-16の発現は神経ではなくて筋で重要であった。睡眠の恒常性を制御する機構としてdaf-16シグナリングが神経系以外で働いていることが示唆された。

 

Results & Discussion

断眠によってDAF-16シグナリングは増強する

 筆者たちは過去のショウジョウバエやラットの断眠実験の報告から、断眠とストレスの関係性に着目し、ストレス関連で研究が進んでいたDAF-16(FOXO転写因子)と睡眠について研究した。DAF-16は種々のストレスに応答して核内移行し、標的遺伝子の転写を制御することが知られている。

 DAF-16は1時間ほどの絶食で核内移行を起こすことが知られている。C. elegansはLethargus中以外ではほぼ常に食事をしているのだが、Lethargus中は2-3時間ほどpumpingが止まる。そこでLethargus中のDAF-16::GFP融合タンパクの局在を観察した。すると食事をしていないにもかかわらず、DAF-16は細胞質にとどまっていた。

 次にL1のdevelopment timingとDAF-16の核内/細胞質比率を計測してみると、L1の途中でDAF-16は核内に存在する比率が最大であり、Lethargus中にはむしろ核内局在の比率が下がることがわかった。これらの結果からはLethargus中にDAF-16が細胞質にとどまる機構があると考えられた。

 Lethargus quiescenceを阻害した場合にDAF-16の局在がどう変化するかを明らかにする為、断眠実験を行なった。Lethargusの最初の30分間、強制的に泳がせた場合、DAF-16はコントロール群と比較して優位に核内移行を起こした。Adultで同じ刺激をした場合には核内移行を起こさなかった。この核内移行に細胞種特異性があるのか観察した結果的、腸管と筋の細胞では核内移行が明らかであった。一方神経細胞では明らかな核内移行を認めなかった。*1加えて、断眠を止めると時間依存的に核に移行している割合は低下した。これらの結果からは主に腸や筋の細胞で、断眠によってDAF-16の核内移行が起こることがわかった。

 DAF-16の核内移行がDAF-16シグナリングの増強に関与しているかどうかを確かめる為の実験をおこなった。DAF-16はdauer*2への移行決定に関わることが知られており、その決定の一部はL1 Lethargus中に起こることが知られている。筆者らはDAF-16シグナルが増強するとdaureへ移行することが知られているdaf-8 変異体をに対して泳がせることで断眠を行った。結果としてLethargus中に泳がされた線虫はその後にdaureへ移行する割合が高かった。daf-8の上流で働くとされるdaf-7でも同じような結果であり、更にその結果はdaf-16のloss-of-function変異も導入すると減弱した。以上から断眠によってDAF-16シグナリングは増強すると考えられた。

daf-16断眠に対する正常な反応のために必要である

 以前の実験の結果からは、Lethargus前半の断眠はLethargus quiescence全体の長さを変化させなかった。実際に再度実験を行なった結果、pumping、defecationの再開のタイミングはコントロールと変化なく、脱皮のタイミングも変化しなかった。

 一方でarousal thresholdの変化ははっきりしていた。断眠を受けた線虫は1-octanol*3への反応性が鈍くなっていた。一方でdaf-16のloss-of-function変異体はarousal thresholdの上昇が認められなかった。この結果から、筆者らは断眠に対するhomeostaticな反応にはdaf-16が関与していると考えた。加えてレスキュー実験を行った結果、筋肉*4daf-16を発現させることでarousal thresholdの上昇が一部認められたが、神経*5での発現では認められなかったとしている。*6よって筆者らは線虫の筋肉が睡眠の恒常性維持に関わっていると考えた。

 

断眠により線虫は致死的なダメージを受ける

 以前の論文と同じく、断眠を受けた線虫の一部は死亡した。L4 Lethargusを30分阻害して死亡率は11%であった。死亡した線虫を詳しく見ると脱皮がうまくいっていなかった。*7

 daf-16のloss-of-function変異体を用いた所、死亡率は上昇した。daf-16(mu86)で18%、daf-16(mgDf50)で57%、daf-16(m26)で53%、daf-16(m27)で38%の死亡率であった。当然のことながら、断眠時のmechanical stimulationの影響は考えられた為、以下の2つの実験をおこなった。

(1)synchronizeさせたL1線虫*8に対してボルテックスによる機械刺激をあたえた。様々なdevelopmental timigで機械刺激を与えた結果、Lethargusに一致するタイミングで死亡率のピークが認められた。このことから死亡は機械刺激のみで起こるのではなく、Lethargusのタイミングで機械刺激があることが必要であると考えられた。

(2)L4 depriveを行う際にexperimental群の他にyoked群を作成した。experimental群は動きが止まるたびに機械刺激を与えられて動き続けることを強要される。一方でyoked群はexperimental群と同じタイミングで刺激される。yoked群は刺激される際に動きが止まっているかどうかは無視される。この2群は同じ頻度で機械刺激を受けるが、exprimental群はLethargus quiescenceを完全に阻害されるのに対して、yoked群は一部のみ阻害される。この2群ではexperimental群は8例中6例死亡したのに対して、yoked群は1例も死亡しなかった。

 以上から筆者らは致死的なダメージとなっているのは機械刺激そのものではなく、Lethargus quiescenceを阻害されることであると結論づけている。

 

致死的なダメージの原因として筆者らは以下の4つの説明を考えている。

(1)頻回に機械刺激をしたことで致死的なダメージを与えた可能性

この可能性はyoked群を設けた実験で否定的と考えている。

(2)泳ぎ続けたことで脱皮が阻害された可能性

確かに線虫は脱皮の際にflipという特殊な動きをする。しかし、flipと脱皮不全の関係もはっきりしていない。

(3)泳ぎ続けたことで新しい表皮をうまく形成できなかった可能性

しかし断眠して脱皮がうまく行っていなかった線虫でも成虫の表皮は形成されていることが確認された。

(4)活動性を維持したことで代謝が増加した為、脱皮に必要な代謝資源を保てなかった。

この考えはDAF-16がストレスと代謝の制御を担っている点からも合致する。

 

 今までにTotal sleep deprivation(TSD)の影響はラットでよく研究されている。TSDラットは死亡したが、認められた変化としては皮疹、過食と体重減少があった。一方で脳には大きな変化がなかった。ショウジョウバエでも断眠の研究がされたが、神経系以外での遺伝子操作で睡眠が影響を受けたし、断眠によって脂肪代謝は影響を受けた。これらの結果からは睡眠や睡眠様行動の恒常性の制御に神経系以外の関与があることも示唆される。

 今回の結果は比較的体の構造が単純なC. elegansにおいても睡眠様行動の恒常性が神経系以外によって制御されていることを示す結果となった。

 

 


 

感想

久しぶりにまともに読んでみました。断眠は難しいな、やっぱり。交絡因子の影響を排除するのがほぼ不可能であるので、実験系の設計や結果の解釈でなんとかするしかない感じがありますが、それが難しい・・・

 

 

*1:筆者らも指摘している通り、神経細胞では細胞体での核-細胞質比が大きい為、測定方法によっては神経細胞で特に細胞質への局在を指摘しにくそうであるが

*2:C. elegansの耐性幼虫 環境が成長に適していない(例えば高温や過密状態)場合にL3の代わりにdauerというステージへ移行する

*3:線虫にとっては有害な刺激となる。

*4:プロモータはPmyo-3

*5:プロモータはPunc-119

*6:ただし実験系が複雑である為、この結果には注意が必要である。実験ではまずコントロール断眠群にわけて、断眠群ではL4 Lethargusを最初から30分間阻害している。その後一度強い機械刺激を加えて線虫の刺激への反応性をLethargusしていない状態に近づける。その状態から1-octanolへの反応性を確認している。恐らく一度覚醒状態に近づけないと差が出なかったものと考えられるが、この方法で直接homeostatic responseを見ているといっていいのかは不明であると思われる。

*7:この様な表現型をmolting-defective (Mlt)という

*8:一番有名なのはL1 arrestを利用したsynchronization

当直で大切なもの

大層な題名をつけてしまいました。旦那です。

 

当直という業務があります。夜間に病院に残って救急外来を受診した患者さんや病棟で何かが起こったときに対応をするお仕事です。今回はそんな当直という業務をしている研修医に大切なものってなんだろうと考えてみたことを書いてみます。

 

もし見てくださる人に研修医がいるなら、参考になれば幸いですし、もし見てくださった人がいつか夜に病院を受診されたら、目の前の医者はもしかしたらこんなことを考えているのかな と思っていただければいいと思います。

 

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当直って皆さんどうお考えでしょう。少なくとも僕にとっては当直はいつも大変にストレスフルでした。

スムーズに病歴を取れない患者さんがいたり、看護師さんに怒られたり、手技がうまく行かなかったり、上級医は人によって言うことが180°違っていたり・・・一日病棟で働いて、夜には救急外来でストレスを受けながら働いて、でも明日もまた仕事。気をつけていても時折、ため息が出てしまいます。

 

一時期は怒られればそれなりに凹んでもいましたし、あまりに疲れたときには少しイライラしてしまっていた時期もありました。しかし最近になって思うのは、精神的・肉体的に疲労していることも、怒られることも事実であるし、あまり避けようがない。一方、自分の機嫌は自分の気の持ちようでなんとでもなるということです。

 

自分の機嫌をよく保つ これが僕が思う当直中の研修医に大切なものだと思うのです。

 

良い機嫌は周りで働いている人にも伝播しますし、なにより患者さんが心地よく思ってくれると思います。研修医といえど、患者さんから見たら"お医者さん"です。機嫌の悪い医師のところにかかりたいという患者さんがいるでしょうか。まして、夜間救急外来を受診する患者さんは不安でいっぱいです。そんな状態で必死で受診した病院で、機嫌の悪い医師に対応される・・・どう考えても患者さんはその病院にいい印象を持てません。 

 

だから研修医の皆さん。頑張って機嫌よく仕事をしましょう。機嫌よく仕事をしていると不思議とストレスフルなこともそう怒らないものです。

ではどうすれば機嫌よく仕事ができるか、それは人によって違います。自分なりに工夫しましょう。例えば僕なら予め面白い教科書を用意したり、お気に入りのスクラブで仕事をしたり、シャワーのときに少し良いシャンプーを用意してみたりですかね。そんな些細なことでいいと思うのです。当直はある程度のストレスがあって当たり前、そんな中でわずかにでも楽しめることがあれば救われると思います。

 

気持ちを楽に、どうか皆さんの当直が平和であり*1、ストレスが少しでもなく機嫌よく終わることを祈ります。

 

*1:当直が平和であることを祈ると、その当直が荒れるというジンクスはありますが、一応この論文で否定されています。

下記間違え

旦那です。

 

カルテといえば紙にドイツ語で〜

というのは今は昔の話です。多くの病院では電子カルテが採用され、カルテの殆どは日本語で書かれています。そこで日常の業務でどうしても生じるのが、誤変換による書き間違えです。特に医療現場では毎日同じ端末を使うことはほとんどなく、病棟の多くの端末が多数の医療従事者に使用されています。なので前の使用者の誤変換が残ってしまい、注意しないと誤変換のまま記載を行ってしまいそうになるのです。今回はそんな誤変換の小ネタです。

 

病棟の患者さんの中には痛みを抑えるために鎮痛薬を頓用で使っている人がいます。私達医師としては鎮痛薬を何回使ったか知りたいので疼痛時指示というのを出します。これは

「痛いときにはこのおくすりを渡してあげてください。このおくすりは6時間空ければ再度使用できますよ」

みたいな指示です。で、この疼痛時指示に従って鎮痛薬を使った場合にはカルテに

"疼痛時指示使用"

という言葉を看護師さんが記載してくれます。(もちろん病院によってルールは異なりますよ)

 

先日僕が仕事をしていて気づいたのは、現在働いている病院のとある病棟のみ数回に一度

"疼痛時指示使用" 

"疼痛痔指示使用" 

になっていたのです。よく見てみるとこの誤変換は同じ患者さんであっても連続で出現することなく、極稀に出現するようでした。推測ですが、"疼痛痔指示使用"と変換される端末がその病棟のどこかに存在し、その端末を使用して記載を行ったときだけそのように変換されているのだと思います。その端末を探し出して数回正しく記載してあげれば改善されるはずですが、流石にめんどくさくてやっていません。(ちなみに"痔"の読みは"じ"であっています。"ぢ"というのは歴史的仮名遣いのようです。)

 

カルテは患者さんの目に直接触れることは多くはなく、今回の書き間違いも可愛げのあるものであるので良いですが、日々患者さんに渡す文書も作っている身としては気をつけなければならないなと思います。病棟でひやっとする誤変換としては

"無くなる" が "亡くなる"

が一番怖いです。不吉な漢字を使うこともあるだけに、元気に退院する患者さんに対してそのような漢字を使うことのないよう気をつけなければいけないなとぼんやりと思いました。

 

macbook pro復活計画

旦那です。

 

いつも調べものやブログの記事を書くのは自分のmacbook proでやっています。

ただこのmacbook pro かなり御高齢でして、2011 earlyモデルなんです。さすがに普段の作業だけでもかなり動きが重くはなってました。一番痛感したのは、とある日のことでした。プレゼンテーションをしようとして、macbook proをプロジェクターにつないだは良いものの、powerpointがいくら待っても立ち上がらない。あまりにも遅かったので急遽友人のPCを借りてプレゼンは滞りなく行えましたが、冷や汗ものでした。

 

そこで考えた対策が

①HDDをSSDに変更する。

②メモリを増設する。

です。多数のブログでこれらの成功報告があったのでこの二つで復活するのではないかと思ったのです。

使用したのは以下のSSD、メモリ、ドライバです。

 

Crucial SSD 500GB MX500 内蔵2.5インチ 7mm (9.5mmアダプター付) CT500MX500SSD1/JP
 

 

 

 

 

アネックス(ANEX) 精密ドライバー +00×50 No.3450

アネックス(ANEX) 精密ドライバー +00×50 No.3450

 

 

 

アネックス(ANEX) スーパーフィット 精密ヘクスローブドライバー T6×30 No.3543
 

 細かい手順に関しては他のブログでもたくさん紹介されていますし、非常に丁寧に解説されているブログが多いので詳細は省きます。

SSDとHDDの交換やメモリの増設はとくに問題なく終了して、あとはTimemachineから復元すれば終了だ・・・というところまで来て、問題発生

OSをインストールしようとするとmac OS X 10.7のLionをインストールしようとしてくれるのですが、私のmacbook proでは

「このアイテムは現在一時的に利用できません。」

というメッセージが出てきて、先に進まない・・・ 現在一時的にってことはしばらく待てばいいのか??

少し調べてみると

このメッセージはいくら待っても解消されないことが判明。

え、じゃあどうすりゃいいんだ・・・

とおもいましたが、今はネット全盛期の時代 ちょっと調べれば詳しい人や同じ悩みをしている人がいるもので、たくさん助けてもらいました。

あまり詳しくはないので正確かどうかは不明ですが、まとめると

①どうやらmacbook proのハードディスクを交換したあとにはまずOSをインストールするのですが、いきなり最近のOS、high sieraなどにはできず、出荷時に入っていたOSをインストールしなくてはいけない。

Mac OS XはLion以降はネットからダウンロード可能

③逆にMac OS X snow leopard以前はインストールのためにはディスクが必要

とのことでした。macbook proを買ったときのディスクが残っているなら全く問題はなかったのですが、もちろんもっていませんでした・・・・

 

泣く泣く買いましたよ。snow leopardアップルストアで まあ2400円でやすかったから全く問題ないんですけどね・・・

 

で今は快適にmacbook proを使えています。

起動までの時間も

before 150秒

after 20秒

ですよ!

ベンチマークも計測していますが

f:id:rukaq:20180725231818p:plainf:id:rukaq:20180725231645p:plain

こんな感じです。

 

大分快適です。これでまたこのmacbook proが現役復帰です。

 

昔からそうなのですが、ものに愛着を持ちすぎるきらいがあるのです。ものを大切にするのは悪いことではないとは思いますが、今回はなやみました。ちょうど新しいmacbook proも出ていましたし、型落ちとかもあったのかもしれませんしね。でもやっぱり愛着のあるものを改良して使えるようになってよかったかなと思います。

 

詳しくないので細かい記載はできませんが、詳しくない人でも他のブログを参考にSSD換装とメモリ増設程度ならできるんだなーという参考になれば幸いです。

 

今度からpythonの勉強もこのmacbookでやろーっと

 

 

初めまして、妻です

 

昨晩、夫との何気ない会話の流れで、

ブログというものを生まれて初めてやってみることに。

人と話すよりも文章を書くことが好きな性分の私、ちょっぴりワクワクしてます。

 

ブログって良いですね。

夫の過去記事を読んで、好きなことを徒然なるままに書いていけば良いんだ、と妙に納得。

私も好きなことを、好きなように、書いていきます。

 

と、朝の通勤電車の中で徒然なるままに書いてみる。

これからどうぞよろしくお願いします。

ブログタイトルの変更

救急科で削られ、全く更新できていなかった・・・

突然ですが、ブログタイトルが変更になりました。先日妻と

「料理とか育てた植物の写真を撮ってるけど、アップする場所がないんだよね〜」

「そしたら僕と一緒にブログやるかい?」

「いいよ〜」

という会話があり、今後は二人で更新することになりました。どうぞお見知り置きを