理系夫婦のうたたねブログ

理系夫婦が好きなことを書いていきます。たまに医学っぽいことを書いていますが、あくまで私見です。

生きる、あるいは起きる

旦那です。

 

当直明けの、酩酊状態と同じくらい痺れた頭で、浮かんだことをかきなぐります。

当直明け、気をつけて家に帰って、しばらく休んでから出かける用事がありました。駅に行って電車を待っていたとき、隣に並んでいた方が、少し体を傾けました。

その動きが、わたしに話しかけるような動きで、わたしはびっくりしました。眠気覚ましに、音楽を聴いていたので周りの音は聞こえず、一瞬本当に話しかけられたかと思ったのです。

 

現実では何も言葉を交わすことなく、電車にのり、もうその方とはおそらく人生で再開することはないでしょう。しかし痺れた私の頭は妄想します。あの人が私に一つ質問をするとしたら、何を聞いただろうと。

 

今日の私は比較的若そうな私服を着ているし、普段から若く見られることが多い。だとすると大学生だと考えられたかもしれない。

となると専攻を聞かれただろうか。しかし、全く情報がない状態から、何を勉強しているのかということをきくのは流石に飛躍している気もする。そう考えるとやはり最初は身の上に関する質問だろうか。「学生さんですか」というのは無難かもしれないなと、勝手なことを考えておりました。

でもなんとなくですが、「あなたはなんのために生きているんですか」と尋ねられた気がするのです。こんな質問はあまりに踏み入り過ぎていて、見知らぬ隣の人から聞かれることはおそらく有り得ないだろうなと思いつつ、こういう質問がポンと頭に出てくるのは、自分がその質問を自問自答しているのかもしれないと思いました。

 

よく考えたらこんな質問は、見知らぬ人どころか、知人友人、家族の誰にもされたことはないのに。

 

気づけばいつも、自問自答している。即答できる時も、できない時もある。

 

でも、それでいいのでしょう。人生の意味なんて見つかったら見つかったでつまらないし。晩年、振り返って後付けするものなのかもしれないです。

 

だから今の答えは多分こう

「私は私がわかりたいことをわかるために生きています。でもそれだけと決まったわけでもなく、まだたくさんのことを悩んでいます。悩むのは辛い時もありますが、それでいいと思っています。」

 

そんなことを考えていたら乗り過ごした。多分、半分寝てた。

 

 

 

ありがとう

旦那です。

3日坊主突破、でも明日は当直なので更新できないですね・・・

 

"辛い時や怖い時はね、心の中で「ありがとう、ありがとう」って唱えていればいいのよ。そうすれば大丈夫だから。ありがとうってのはすごい言葉だよね。" 

詠み人知らず

職場で聞いた言葉です。カーテン越しに聞いたので、誰が発した言葉かわかりませんでしたが、とてもいい言葉だなと思いました。

 

わたし達は最近のCMの言葉を借りれば「医療人」になってしまっています。それは必要なことではあるのですが、一方で患者さん達の心には意識しなければ近づけないのかもしれません。患者さんが不安であったりする際、ついつい口をついて出てくるのは不安を解消する様な「根拠」の話ばかり。心に寄り添ってこその「医療人」であるとは思うものの、意識していても中々、血の通った会話はできないものです。合併症の確率がどの程度低いのかというパーセンテージや症状に対する対症療法の説明だけではなく、この様な言葉も患者さんの不安を和らげるのに必要なのかもしれないなとつくづく思いました。教えてくださってありがとうございます。

 

言葉の力と腐敗

旦那です。

 

"But if thought corrupts language, language can also corrupt thought."

(思考が言葉を腐敗させるなら、言葉も思考を腐敗させ得る。)

 

ジョージ・オーウェル 1946年 政治と英語 の中で出てくる言葉らしいです。

 

なんとなく見たNatureダイジェストで見つけた言葉です。孫引きになってしまいますね。

 

www.natureasia.com

 

わたし達は言葉に囲まれて生きています。誤った使い方の言葉や悪意のある言葉に囲まれていると思考まで良くない方向に行ってしまうのは当然なのかもしれません。

それは倫理的な意味でもそうでしょうし、科学的にもそうでしょう。

科学の話を少しするなら、科学における言葉は時には枠組みの様な役割を持っていると思っています。自然界の何らかの現象に言葉によって名前をつける時、そこには枠組みを作っていると思うのです。

枠組みである言葉を誤って使用していれば、その上に誤った知識の積み重ねが起こりえます。

正しい言葉づかいを心がけたいですね。

 

仮説と科学者

旦那です。

 

日々膨大な量の文章や言葉に出会う中で、気に入った一文を紹介するコーナーを作って見ました。

 

最初は自戒の念を込めて、有名な本から最も有名な一文を

 

"ある仮説を真であると信じる気持ちの強さは、それが真であるか否かには何の関係もない"

ピーター・B・メダワー

 

若き科学者へ【新版】

若き科学者へ【新版】

 

 

日本は残念ながら、科学での捏造の多い国です。この言葉を胸に刻んで、自分と自然と世界に正直な科学者であり続けようと思います。

祝10年!

妻です。

2回目の投稿です。

 

今日は私たち理系夫婦について、徒然なるままに書き連ねたいと思います。

 

ブログのタイトルにもなっておりますが、私たち夫婦は2人とも理系出身。実は、私たち夫婦は中高大と同じ学校出身でして、今日でなんとお付き合いを始めてから丸々10年が経ちました。時が経つのは早いものです。

 

専門は違えど、大学ではそれぞれ研究室に所属し、お互い研究に没頭しておりました。夫は線虫、私は細菌。お互いの研究や、最新の論文について話し出すと止まらず、よく夜通し語り合ったものです。(議論が白熱してケンカをするなんてこともしばしば…(笑))もちろん現在もこの手の話は大好きで、夫とはよく語り合います。

 

私たち夫婦は、生命の素晴らしさ、科学の面白さを共有することで繋がっていると言っても過言ではないと思います。

 

現在はお互い異なる職業に就いておりますが(夫: 研修医、妻: 製薬会社の臨床開発)、昔も今もこれからも、そういったことをいつまでも熱を持って語り合える夫婦でいたいなと、10年経った今、改めて思いました。

 

いつもありがとう、夫氏。これからもよろしくね。

 

(私の職業についても、いつか書き連ねてみたいなと思っております。)

 

それではまた。

 

 

線虫は眠るのか

旦那です。

 

満を持して線虫へ

ショウジョウバエの論文から8年、あとを追う様に線虫でもsleep-like stateの報告がありました。*1

Lethargus is a Caenorhabditis elegans sleep-like state 

Raizen DM, Zimmerman JE, Maycock MH, Ta UD, You YJ, Sundaram MV, Pack AI. 31;451(7178):569-72. 2008 Jan 9.

 

ショウジョウバエの論文はこちら

 

med-ruka.hatenablog.com

 では行きましょう。

 

Summary

 無脊椎動物で認められる活動の低下と哺乳類の睡眠との間には類似点があり、睡眠様行動が進化的に広く保存された行動であることが示唆される。線虫 Caenorhabditis elegansの発達段階にも静止状態が存在し、Lethargusと呼ばれる。Lethargusは4回の脱皮の直前に起こり、そのタイミングは時計遺伝子periodC. elegansホモログであるlin-42によって規定されている。

 筆者らは今回、Lethargusが睡眠の行動学的な定義を満たす事を明らかにした。加えてcGMP dependent protein kinase(PKG)が睡眠様行動の制御分子である事を明らかにした。筆者らの結果からは今後C. elegansが睡眠研究の有用なモデル生物となると考えられた。

Results

Lethargusは脱皮直前に認められる睡眠様行動である

 C. elegansが脱皮の前に活動量を低下させることは知られていた。実際にeggからadultまでの行動量を定量*2すると、活動量の低下は脱皮をする直前に認められることが確かめられた。この脱皮直前の活動量の低下をLethargus*3と呼ばれている。

Lethargus中は感覚応答が変化する

 次にLethargusが睡眠の特徴を備えているか確かめた。睡眠の重要な特徴の一つとして感覚応答の減弱が挙げられる。この点を確かめるため、筆者らは機械刺激と化学物質による嗅覚刺激の両方に対する応答を観察した。

 最初に機械刺激に対しての応答を検証した。用いた刺激はdish-tapという弱い機械刺激であり、関連するニューロンはALM, AVM, PLM*4によって感覚される。AdultやL4*5ではdish-tapに対する反応で最も多いのはわずかな後退*6であったが、それ以外にしばらく続く後退で反応したり、向きを変えたりといった反応も少なからず認められた。一方でLethargus中の反応としてはほとんどがわずかな後退であり、他の反応はほとんど認められなかった。このことから筆者らは機械刺激に対する反応の低下があると推察している。加えて、dish-tapに反応自体がなかった個体はほとんどなく、機械刺激の感覚神経はきちんと機能していると考えられた。

 次にLethargus中の個体の1-octanolへの反応性を調べた。1-octanolはASH感覚神経で受容され、C. elegansに忌避応答を引き起こすことが知られている。1-octanolを鼻先に垂らした場合に反応するまでの時間を計測するとLethargus中は有意に反応するまでの時間(潜時)が延長した。一方でLethargus中の個体に対して一度強い機械刺激を加えてから1-octanolへの反応性を見ると、潜時には差がなかった。このことからLethargus中であっても刺激で覚醒状態に戻せばASHを介した感覚応答は正常に行われている事が明らかになった。つまりLethargus中の感覚応答の変化は感覚情報の受容の変化ではなく、感覚情報の処理の段階で生じている事が示唆された。

 さらに、Lethargus中の運動機能についても考察を行なった。Lethargus中は全くの無動というわけではなく、定期的に短い時間活動が認められる。この活動中にはLethargusしていない時と同じ様にsin波の様な体勢を取りながら這っている。強い機械刺激をくわえて一時的に覚醒状態をもたらした際の運動量を、体を曲げる回数を指標として計測したところ、L4とLethargus中、adultに差はなかった。

Lethargusはhomeostaticな制御を受けている

 睡眠はhomeostaticな制御を受ける事が知られている。強制的に覚醒させられた後にはより深く睡眠する事が知られており、その深い睡眠中には感覚応答が大きく減弱する事が知られている。*7筆者らはLethargusがhomeostaticな制御を受けているか確かめるために、睡眠の阻害を行なった。具体的にはL3 Lethargusから9時間経った個体に対して機械刺激を加えた。筆者らの実験系ではこの時間帯は殆どの個体が静止状態であった。コントロール群と比較して機械刺激を加えた群では静止度が31%低下していた。1時間の機械刺激ののち、C. elegansの行動を観察すると静止度のピーク値と1回の静止状態の長さ*8に関しては有意に増加が認められた。一方でLethargusが終了する時間に関しては変化がなかった。*9

 さらにhomeostasisの検証を1-octanolへの反応性を用いて行なった。30分間全く静止状態を取らせない様に機械刺激をくわえた個体では睡眠阻害をしていない個体に比較して1-octanolを添加して、反応してから再度静止状態に戻るまでに移動する距離が短い事がわかった。また先述の様に一度強い機械刺激を加えると1-octanolへの反応性は睡眠阻害した個体でもしていない個体やadultの個体と同様であったが、睡眠阻害している個体はしていない個体に比して機械刺激の後、直ぐに潜時が延長する事が明らかになった。

 これらの実験結果からはLethargus中の睡眠様行動はhomeostaticな制御を受けていると考えられた。

cGMP dependent protein kinaseが睡眠様行動を促進する

 Lethargusの制御遺伝子を探索するにあたって、筆者らは最初にegl-4に着目した。*10筆者らが作成したegl-4の機能獲得変異体(gain-of-function 以下 gfと記載)はadultでも活動や食事を止める事が知られていた。そこでegl-4(gf)とegl-4(loss of function 以下lfと記載)変異体のLethargusを測定した。

 筆者らの予想通り、egl-4(gf)変異体はLethargus中の静止度が上昇しており、逆にegl-4(lf)変異体では低下していた。加えて1-octanolへの反応性を調べたところ、egl-4(gf)では潜時が延長していた。強い機械刺激ののちには潜時は短縮して野生型と同等となった。

 観察からegl-4(gf)変異体はadultでも静止状態となることがわかった。このadultで認められる静止状態はRNAiを用いてegl-4の発現を低下させると認められなくなった。この様にLethargus以外のタイミングでも静止状態が認められることは、睡眠様行動が必ずしも脱皮のタイミングと一致する必要が無いことを示唆する。

 egl-4(gf)変異体では睡眠様行動が増強するのに対してegl-4(lf)では1-octanolへの反応の潜時が短縮した。いくつかの感覚神経でegl-4を発現させたところ、この潜時の短縮は野生型と同等程度まで回復した。この結果からはLethargusの制御に感覚神経が関わっていることを示唆した。egl-4が感覚神経で馴化に関わっていることから考えると、egl-4は感覚入力を減弱させることに関わっていると考えられる。

 ここまでの結果からはegl-4C. elegansの睡眠様行動に関わっていることが明らかになったが、他の無脊椎動物でも同様に睡眠様行動に関わっているのか明らかにするために、筆者らはDrosophila melanogasterでPKGを変異させて作用を減弱させたところ、D. melanogasterの睡眠は減少した。このことからPKGが睡眠用行動を制御することは無脊椎動物内で保存された機構であると考えられた。

 一方 D. melanogasterの研究からはcAMPシグナルが覚醒に関わるとされている。cAMPの睡眠への関与を確かめるため、C. elegansの変異体を作成したところ、覚醒閾値の変化が認められた。このことからはD. melanogasterC. elegansの睡眠様行動の間には分子遺伝学的な機構の保存があると考えられた。

Conclusion

 睡眠が進化の過程で保存されている理由は不明である。C. elegansに於いては睡眠様行動が脱皮という発達に重要なタイミングで認められることから、睡眠様行動が成長や発達と大きく関わることが考えられる。Lethargusに近いタイミングでシナプスの変化が起こるという報告*11からは、Lethargusという睡眠様行動によって神経系に変化が起きているとも考えられる。哺乳類でも睡眠が脳の可塑性に重要であることと相同な現象が、Lethargus中のC. elegansにも起こっているのかもしれない。

 

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感想

 最初に読んだのはいつの事だったでしょうか、思い出深い論文ですね。しかし読み直してみると再発見があるものですね。D. melanogasterの結果があることは覚えていましたが、本文中のfigに登場することは忘れていました。てっきりSupplementaryに出てくるのかと・・・

 この論文が出てからようやくC. elegansの睡眠様行動は市民権を得たといってもいいと思います。2016年くらいには「もう睡眠様行動じゃなくって睡眠って呼ぼうよ!」みたいなレビューも出てきます。

 温故知新、久しぶりにゆっくり読めて良かったです。

 

 

 


*1:厳密にはこの論文の前にもいくつかquiescenceの論文があるのですが、タイトルにまでsleepという言葉の入っている著名な論文としてはこの2008年のNatureがあがります。

*2:プレート上で10秒ごとに画像を撮影、連続する画像で減算処理を行って活動量を定量する。それを60時間に渡って行う。

*3:Lethargusの定義については細かく考えていくと議論があるが・・・結論が出なそうなのでスルー

*4:C. elegansの感覚神経や介在神経はこの様に3文字で記載される事が多い、この場合、最初の1文字はanterior、posteriorを表している。

*5:4齢幼虫

*6:dish-tapに対するdominantな反応が後退であるのは、ALMやAVMのみが反応しているのではなく、dish-tapに反応する感覚神経の内ではALMやAVMが優位であるという事

*7:ここのhomeostaticの解釈が、この論文最大の疑問点であると思われる。一般的にはhomeostatic reboundは睡眠の量で語られる事が多く、睡眠阻害後の睡眠が増加する事がhomeostaticな制御を示唆するという考え方が優勢であるように思う。一方でこの論文ではあくまで睡眠の深さにしか言及していない。以前に睡眠の研究を長くやっている方(C. elegansは非専門)から、「この論文でのhomeostasisは何か違う気がする」と言われたが、その辺りが関与しているのではないかと考える。

*8:先述の通り、Lethargus中もC. elegansはわずかに動くため、Lethargusは静止状態と活動状態の繰り返しから成っている。活動状態と活動状態に挟まれた静止した時間が、1回の静止状態の長さとなる。

*9:睡眠阻害をしても同じdevelopmental timingでLethargusが終了している。

*10:ちなみに以前紹介したgeneticsの論文の筆頭著者とこの論文の筆頭著者は同じ先生であり、こういう展開になるのは当然であったのかもしれない。

*11:DDリモデリングという現象、運動ニューロンシナプスの接続変化がL1のLethargus頃に起きる

似非バルサミコ酢

旦那です

 

今日は一日非番・・・

かといって線虫も昨日継代したばかりで実験に使えない・・

そもそも暑すぎて家から出たくない・・・

ということで奥さんが出かけた隙に、久しぶりの料理をしてみました。

参考文献はこちら!

 

組み合わせ自由自在 作りおきおかず374

組み合わせ自由自在 作りおきおかず374

 

 この本、オススメです。

同じ食材で長持ちするレシピやコッテリ系、あっさり系みたいに作りわけがたくさん書いてあるので、ローテーションして作っても良さそうですし。難しいレシピもあまりありません。レシピの数も多いですしね!

といってもほとんど普段の料理は奥さんがしてくれているので、僕は気が向いただけするというくらいで、料理について語るなどおこがましいのですが・・・

 

冷蔵庫にもやしがあったのと、なんとなくねぎを食べたかったのでp128のもやしの中華サラダとp130の焼きねぎのコロコロ焦がしマリネを作ってみることにした!

しかしスーパーで食材を買い揃えていたら

バルサミコ酢が高い・・・なんで500円以上するんだ・・・・

ということでバルサミコ酢を買わずにオイスターソースと酢で再現することに!

参考文献はこちら

news.cookpad.com

ふむふむ、どうやら人間の味覚的にも、味覚センサー的にも、オイスターソースと酢を1:1で混ぜるとバルサミコ酢を再現できる様だ・・・

ということで似非バルサミコ酢を作成して、全ての材料を手に入れて素早く作って見ました!

 

f:id:rukaq:20180826170212j:plain

無印のホーロー容器に入れて見たところです。見た目は悪いですが、味はまあまあ・・・かな?

肝心の似非バルサミコ酢ですが、そこそこいけている気がします。酢のタイプにもよるんでしょうが、かなり再現できている気がします!結構風味の強目のお酢を選ぶといいかもしれません。

あとは奥さんが良しとしてくれれば良いのですが・・・僕が良いと思っていても、僕は味音痴だからなぁ・・・

祈るのみ!