今日紹介するのはこちら
eLifeに2016年に発表された論文です。
この論文の著者たちは2013年に
という論文をCurrent Biologyに報告しています。以前の論文では線虫の睡眠には線虫のRISというsleep-active neuronでAPTF-1という転写因子が重要だと言っていました。実際に私もaptf-1(loss of function)変異体の線虫を観察したことがありますが、本当に睡眠様行動をしていなくってびっくりした覚えがあります。RISは睡眠の実行系の中でもおそらく最も下流にあるのではないかと思っていますので、私の興味とは若干ずれてはいたのですが、表現系が印象的でしたのでその後もフォローしていたら出てきた論文が今回の論文です。
以前の論文ではsleep-active neuronの神経伝達物質がGABAではなく神経ペプチドであることまで明らかにしていたのですが、今回わかったことはというと
- aptf-1の発現がLIM-6というGABAergic neuronへの分化に関わる転写因子に制御されていたこと
- RISによる睡眠様行動の誘発は(少なくとも一部は)FLP-11という神経ペプチドを介して起こっていること
- FLP-11の放出が起こった後のレセプタについてははっきりわかっていない
ということでした。神経ペプチドが哺乳類の神経系でどの程度の役割を果たしているのかは勉強不足でわからないのですが、少なくとも哺乳類でsleep-active neuronと思われてるneuronの神経伝達物質にもガラニンがあったりします。(だからどうしたと言われそうですが)
それにしても、線虫においてもハエでもsleep-active neuronというのは強力だなと思います。強制的に眠らせたり、睡眠中にlocomotor activityを保たせたりなど意外と睡眠の実行系とそれより中枢(そんなものがあればですが)というのは切り離すことができるのかもしれません。 RISの上流を探せばもしかしたらそんなneuronが見つかるのかなーと妄想したこともありますが、特に実験等したことはありません。302個しかない神経系に果たして睡眠の中枢なんてものがあるのかどうか、興味があるとこです。