理系夫婦のうたたねブログ

理系夫婦が好きなことを書いていきます。たまに医学っぽいことを書いていますが、あくまで私見です。

単著の教科書の著者を尊敬する

旦那です。

 

現在は呼吸器内科で研修をしているのですが、先日上の先生が

胸膜疾患のすべて 改訂第3版

胸膜疾患のすべて 改訂第3版

 

 という本を貸してくださいました。馴染みの無い分野の教科書ではあるものの語り口が論理的であり、基礎医学から臨床までの知識がきれいにまとめてありました。非常に楽しく読ませていただいたのですが、(もちろん読んだのはほんの一部ですが)ふと表紙を見て、light先生の単著であることに驚きました。

 

医学の教科書は世の中に多くあり、もちろん単著のものもあるのですが、このレベルの分野の広さで単著というのは珍しいと思います。同じような教科書として自分が持っているのは

The Biology of Cancer

The Biology of Cancer

 

くらいでしょうか。 カンデル神経科学やハリソン内科学などは当然のように複数著者ですものね。

 

もちろん複数の著者で書く教科書のほうが良い点もあります。各方面の専門家を集めることでより完成度を高めることが最たる利点と思われます。神経科学や内科学はすでに膨大な知識が積み重なっているため、むしろ複数著者でなければ教科書を書くことは不可能に近くなっているのだと思います。

では上記した胸膜疾患やがんの生物学についての知識が未発展かというと全くそうではありません。1章を書くのに100を超える論文を引用し、それらを適切に結びつけて書いていく・・・途方もない作業であると考えられます。単著で教科書をかけるということはその分野の全てに深く精通しているということであり、一理系の人間として深く尊敬の念を感じました。

 

 

 

ちなみに「胸膜疾患のすべて」の原著を書いたlight先生は胸水の鑑別でよく出てくるlightの基準*1を提唱された先生です。私は来年から基礎医学系の大学院に行き臨床からは離れるため、この教科書を臨床に活かしてどうこうということはないでしょうが、このような素晴らしい教科書*2に出会えて嬉しくなったので記載しました。

 

*1:最初にlightの基準を提唱したのはなんと初期研修1年目だった時だそうです。座談会のURLを貼っておきます。

医学書院/週刊医学界新聞(第3251号 2017年12月04日)

*2:今回読んだのは日本語訳版であったので、訳された先生方も素晴らしかったため良い教科書になったのだと思います。