理系夫婦のうたたねブログ

理系夫婦が好きなことを書いていきます。たまに医学っぽいことを書いていますが、あくまで私見です。

便利なGMP

今日の論文は

www.genetics.org

です。2006年とだいぶ前の論文です。

cyclic GMPといえば細胞のシグナル伝達のセカンドメッセンジャーとして有名ですね。そしてPKGというとcGMPの下流に当たる分子ですが、この辺の経路は分子生物学のどの分野の論文を読んでも出てくるんじゃないかってくらい、どの細胞でも重要な役割を果たしています。C. elegansでも寿命、産仔数、身体の大きさ、行動、耐性幼虫化など多方面に関わっております。

2006年までC. elegansのPKGのmutantというとloss-of-function変異体しか知られていなかったのですが、この論文はgain-of-function変異体を単離したということで書かれています。

線虫のegl-4という遺伝子のコードするタンパク質は哺乳類のPKGⅠと相同とされています。以前まで知られていたloss-of-function変異体では寿命がのび、卵の数が増え、体が大きくなり、食物があっても活発に動くという特徴が報告されていました。この論文で報告されたegl-4(ad450sd)という遺伝子を持った線虫はそれらの真逆の性質を持っていました。

簡単に考えるなら、egl-4(ad450sd)という遺伝子を持った線虫の身体の中ではPKGの作用が増強していると考えられます。しかし、それにはいくつかの可能性があります。例えば、EGL-4の蛋白量が増えているのか、作用が増強しているのかなど。前者の場合にはmutationは遺伝子の制御領域に入っているかもしれませんし、後者であれば活性部位に入っているかもしれません。その辺りを詰めて行くというのがメインになってきます。double mutantをつくったり、タンパク量定量を行なった結果、ad450sd変異はGMP binding siteの変異であり、タンパク量は増えていないことがわかりました。

 

僕は医学部を卒業したので(それは言い訳に過ぎませんが)、分子生物学の基礎があまりないため、なかなかシグナル伝達をしっかり理解することができていませんし、そもそも遺伝学もあまり理解できておりません。そのせいかcGMPの様に多様な作用をもつ分子の変異を全身に起こすと、話が複雑になりすぎてついていけません。そもそもcGMPなどになると下流が広がりすぎて、調節性が悪いのではないかと思ってしまいます。

 

まとまりの無いひどい紹介ですが、この論文のfirst authorであるDr. Raizenはこの2年後にNatureに線虫の睡眠についての論文を出します。その辺りから線虫の睡眠研究が本格的に始まって行きます。最初に同定された遺伝子として挙げられているのがegl-4なのです。その割にはegl-4から睡眠に到るまでの経路に関してはあまり研究されていないような気がしますが、僕の勉強不足かもしれません。それかやはり下流が広がりすぎて収集がつかないのかもしれません。